このような疑問にお答えします。
スポーツカーを街乗りで使用すると、意外とよく走らないとか、走りにくいというお話しは時々耳にします。
速いはずのスポーツカーがなぜ遅く感じてしまうのでしょうか?
過去にインテグラタイプR96specで峠を走ったり、レースカーで耐久レースに参加した経験のある筆者が、その理由について解説しようと思います。
スポーツカーが街乗りで遅い理由3選
世の中でスポーツカーと呼ばれている車が、一部例外はあるとはいえ、時々街乗りで遅いと言われている理由は、次の3つが考えられます。
- エンジン特性によるもの
- タイヤによるもの
- デフのセッティングによるもの
元々スポーツカーは、スポーツ走行をすることを視野に入れて設計されている為、これらの要因を元々の特性として持っている事が多いです。
スポーツ走行時に求められる性能と、街乗りで求められる性能には大きな違いがあり、それがいわゆるスポーツカーが街乗りしにくいという声に繋がっているようです。
この事実は、裏を返せば普通の車のセッティングを知り、それをスポーツカーに応用出来れば、街乗りが苦にならないスポーツカーを作る事も可能だという事になります。
それでは、スポーツカーが街乗りで遅い理由 つを1つずつ解説します。
エンジン特性によるもの
スポーツカーが街乗りしにくい理由の1つとして、エンジンの性能特性が挙げられます。
スポーツカーのエンジンは、高回転域の最大出力を重視した設計となっている為です。
スポーツカーに乗る方の多くは、エンジンの最大出力に注目しがちです。
この車は何馬力あるから速いんだとか、どうしても馬力競争の意識がどこかにあります。
メーカー側もそれを考慮し、カタログ上の最大出力を出来るだけ大きくしようとします。
カタログ上の馬力が大きいほど、商品としての競争力が上がり、よく売れるからです。
しかし、街乗りでそこまで高回転を使用するでしょうか?
高回転域の最大出力を重視すると、おのずと低回転域の性能は犠牲になります。
低回転域を多用する街乗りでスポーツカーが乗りにくいのは、このようなエンジン特性にも一因があります。
タイヤによるもの
スポーツカーが街乗りしにくい理由の2つ目として、装着されるタイヤの特性が挙げられます。
先にも述べたように、スポーツカーはスポーツ走行を意識して設計される事がほとんどなので、タイヤもスポーツ走行を意識した物が装着される傾向がある為です。
スポーツカーのタイヤは大きくて太いイメージがありませんか?
それはもちろん、スポーツ走行時のグリップ力やブレーキング時の安定性を考えての結果ですが、街乗りではこのような高性能なタイヤは、むしろデメリットが顔を出す可能性があります。
幅の広いタイヤは、重量も重く転がり抵抗も大きいです。
加えて1つ目に述べた高回転域重視のエンジン特性が合わさると、発進時や低速走行時にモサッとした動きになりがちです。
もちろんスポーツカーの場合は見た目の要素も大事なので、太いタイヤを全否定するつもりはありませんが、街乗りだけを考えると過剰な性能というか、無駄が多いセッティングになってしまうのもまた事実です。
スポーツカーが街乗りしにくい理由の2つ目は、タイヤが大きく太く、スポーツ走行向けのセッティングがされている事が挙げられます。
デフのセッティングによるもの
スポーツカーが街乗りしにくい理由の3つ目は、デフのセッティングがスポーツ走行向けになっている事が挙げられます。
スポーツカーのデフは、機械式・ビスカス・トルセンなどが採用される事が多く、スポーツ走行時の安定性やトラクション性能を重視した設計がされている為です。
左右のタイヤの回転差を吸収して、車を曲がり易くする役割があるデフですが、スポーツカーのデフはこの回転差を制限して、よりスポーツ走行向けのセッティングがされている事が多いです。
スポーツ走行向けのデフは、左右のタイヤの回転差を制限する為に、厳密に言うと曲がりにくく、走行時の抵抗も大きい為燃費的にも不利で、機械式の場合は作動時に音が鳴るなど、街乗りに向いているとはとても言えません。
雪道などでは、スポーツ走行向けのデフの方が安定性とトラクションがあって走り易いとの声もありますが、なかなかに希なケースでしょう。
スポーツカーではない普通の車は、オープンデフと言って、曲がり易く抵抗も少なく燃費に有利なデフが採用されている事がほとんどです。
スポーツカーが街乗りしにくい理由の3つ目は、デフのセッティングがスポーツ走行向けになっており、曲がりにくく燃費に不利な状況になっている事が挙げられます。
普通の車の方が街乗りに向いている理由
いわゆるスポーツカーではない普通の車が街乗りで乗り易い理由は、次の3つが挙げられます。
- エンジン特性が低速トルク重視
- タイヤの特性が街乗り重視
- デフがオープンデフ
スポーツカーがサーキットなどのスポーツ走行を意識した設計であるのに対し、スポーツカーではない普通の車は一般道での街乗りを意識した設計になっている為です。
普通の車はスポーツカーほどカタログ上の最高出力を重視するユーザーが少なく、どちらかと言うと乗り心地や燃費が重視されます。
その為、エンジン特性も低回転からトルクが出るセッティングとなっており、街乗りがし易くなっています。
また、タイヤもスポーツ走行を意識する必要性があまり無い為、グリップ力よりも乗り心地や低燃費性能が重視されたタイヤが装着され、その点でも街乗りに向いています。
さらに、スポーツカーがトラクションを重視したデフ(LSD)を装着する事が多いのに対し、普通の車はトラクション性能は劣るものの、走行時の抵抗が少ないオープンデフを採用する事がほとんどなので、その点でも街乗りに有利です。
このように、スポーツカーとそうではない車とではエンジン、タイヤ、デフのセッティングが異なるので、適した走行シーンも異なってきます。
スポーツカーを街乗りし易くする方法
それでは、スポーツカーを街乗りし易くするにはどうしたら良いかというと、次の3つが挙げられます。
- エンジン特性を低速トルク重視にする
- タイヤを純正サイズ以上にしない
- デフオイルの粘度を純正より上げない
普通の車のセッティングに近づけて行くのが、スポーツカーを街乗りし易くするポイントです。
例えば、マフラーを社外品に交換してパワーが上がったとすると、それは全域でパワーが上がる事はほとんど無く、主に高回転域の出力が向上する事になります。
逆に低回転域の出力は交換前と同等か、それ以下になる可能性があるので、街乗りし易さを重視するなら純正より改造しない方が良い場合もあります。
また、タイヤを純正よりもサイズアップした場合、より街乗りがしにくくなります。
具体的には、インチアップの場合はハイギアード化による発進・加速性能の低下や、幅を広げると走行抵抗が増えるので加速や燃費性能が悪くなります。
次にデフについてですが、デフオイルの粘度によっても街乗りのし易さが違います。
スポーツ走行を意識して純正よりも固めのデフオイルを入れている場合、耐熱性能や耐磨耗性能は向上しますが、オイルが固い分走行抵抗が増加し、主に加速や燃費性能に影響してしまいます。
基本的にはノーマルの純正状態では、ある程度街乗りも考えられてセッティングされているので、そこから大きく外さないのがセオリーとなります。